帰り続けるだけは寄り道

映画やミステリー小説の感想などをたまにつらつらと。 過去の記事はマイカテゴリの「INDEX」に作品別、作家別でまとめています。 いただいたコメント、トラックバックは確認後の表示になります。

2005年11月

舞城王太郎『暗闇の中で子供』

推理小説家の奈津川三郎は、ある日田んぼにマネキンを埋める美少女ユリオを見かける。

ユリオの奇妙な行動はマネキンを埋め終わっても続き、一旦家に引き返して小屋からまたマネキンを抱えて出てきてあぜ道を歩いて、同じように田んぼに埋める。

三郎が小屋を調べると、そこには三郎の母が頭を殴られ生き埋めにされていた場所にピンを刺した地図があった。

解決したと思っていた母親の事件に何か関係があるのか?

 

----

 

暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)
暗闇の中で子供 (講談社ノベルス)

 

 

「煙か土か食い物」の続編です。前回の語り手は奈津川家四男の四郎でしたが、今回は三男の三郎です。

 

途中からの展開がしっくりこなくて、前の方のページをめくって確認したりするんだけど、いかんせん相変わらず段落が少ない文章だし、章タイトルも数だし、どこらへんにあった話なのかが見つけにくい。

なので早々にあきらめてとりあえず読み進めることにした。

 

 

物語にはいくつか事件が出てくる。

しかしそれぞれの事件があまり重要に感じない。解決してるのかしてないのかも段々わからなくなってくる。

本文では解決したことになってるんだけど、えっそうだったっけ?と思ったり、その解答でいいのか?とか、後から本当の真相が出てくるんじゃないかと思ったり。

そんなふうに翻弄されながらも最後に行き着くと、なるほどそういうことかとやっとわかった(気がする)。

 

ユリオと三郎のイチャイチャもかなりウザかったけど、あれも三郎の嘘ありってことだったら納得。

巨大子供とかおかしすぎるもんね。

で、これの続編はまた出るんですかね?出ないとちょっとまとまりが悪すぎる気がする。

 

あと、三郎と四郎のキャラの違いがあまりはっきり書き分けられていなかったのが残念。これは作者の力不足なのか、それとももっと理由があるのか?私にはわからん。

 

「煙か土か食い物」と二作続けて読んでちょっと胸焼け気味。

次回読むまでは少しインターバルを置こう。

 

『ストーカー』

大型ショッピングセンターの写真現像店で働くサイ。

彼は、店の常連客のニーナ・ヨーキンが持ってくる幸せそうな家族写真から、ヨーキン家の家族像に強い憧れと親しみを抱くようになっていた。

ある日サイは、ニーナの夫ウィルが浮気をしていることを知る。

 

----

 

ストーカー [DVD]
ストーカー [DVD]

 

 

ロビン・ウィリアムスが、ヨーキン家に対して偏執狂的な妄想を抱くストーカー店員のサイを演じています。

 

 

もっとストーカー行為がエスカレートしていく映画かと思っていましたがそうでもありませんでした。

妄想逞しい寂しいおじさんが、大好きなある家族の幸せを大事にしたいという想いから、一方的で勝手な判断に基づいた独善的な行動をして哀れを誘う、という映画でした。この誤解は邦題のせいでしょう。

終わってみれば特に大事件は起こってないという。

良くあるパターンだと、最後はちょっとした不幸な偶然が重なって、たいした罪を犯していない主人公が警官に射殺されて不条理感を残して終わるっていうのがあるけど、この映画は普通に逮捕されて取り調べられるところまでで終わり。

話自体は結構地味。そんなわけで邦題だけでも派手目にしたのかもしれないなと思いました。

でも面白かったですよ。

 

どうでもいいことですが、おじさんの斜め掛けカバンって、哀愁がありますね。

 

舞城王太郎『煙か土か食い物』

サンディエゴで外科医をしている奈津川四郎は、母親が怪我をしたと聞いて日本に帰国する。

母親は何者かに襲われたらしい。頭部を強打され、頭蓋骨の一部を骨折させられ、頭部をビニール袋で覆われた状態で自宅の庭に生き埋めにされていた。地中から出ていた手を父親が発見したという。

しかも母親以外にも同様の事件にあった被害者が4人もいるという。母親をこんな目にあわせたヤツは絶対にただじゃおかないと、四郎は犯人探しをすることになった。

 

----

 

煙か土か食い物 (講談社ノベルス)
煙か土か食い物 (講談社ノベルス)

 

 

第19回メフィスト賞受賞作です。

話題になっていたのは知っていたものの、幻惑系の話かと思い込んでいたので手に取ることがなかったんだけど、友人の薦めもあって読んでみました。

 

続きを読む

『回路』

インターネットの向こうから何かがやってきて、何故か次々と人がいなくなったり、自殺してしまう。

 

----

 

という映画です。監督は黒沢清。

 

回路 [DVD]
回路 [DVD]

 

 

とにかく面白かった!久しぶりにゾクゾクしながら観ましたよ。

 

ちなみに、最後まで純粋にホラーを楽しめるタイプの映画ではありません。

前半は、大学の友人同士、仕事仲間といった小さな世界で起こる怪現象をじっくり見せてくれます。

しかし居なくなったり自殺したりする人は身近な人達だけではなかったので、中盤になると街が、そして後半はとうとう世界が廃れてしまい、一気に話がでっかくなります。そして絶望的に救いが無くなって、本当の怖さが残ります。

その分後半はゾクゾク感は薄れますが。

個人的には、頭で考える怖さも好きですが、それよりも感覚的な怖さの方がもっと好きなので、前半の方が好きです。素晴らしかったです。

 

それにしても理屈と感覚の両方の怖さを楽しめる、こんな貴重な映画があったとは、ありがたいことだ。

 

中町信『天啓の殺意』

推理小説出版社の編集者の花積明日子は、推理小説化の柳生輝彦からある推理小説の原稿を持ち込まれた。一時は華々しく活躍していた柳生だが、ワンパターンの作品はやがて飽きられ、いまや忘れかけられた存在。

そんな柳生がまた新作を書いたという。それはリレー推理小説で、「問題編」は柳生が書き、「解決編」にはタレント作家の尾道由起子を指名してきた。

「問題編」を花積に託し、柳生はそのまま旅行に旅立ったのだが・・・

 

----

 

天啓の殺意 (創元推理文庫)
天啓の殺意 (創元推理文庫)

 

 

本書は1982年にトクマ・ノベルスから「散歩する死者」として刊行された作品の改稿版で、東京創元社から出版されました。

 

柳生は旅行に出たまま行方がわからなくなったと思ったら自殺しちゃう。

やがて柳生が書いた推理小説の「問題編」は、実際に起こった殺人事件を題材にしていたことが判明する。

しかし、普通は実際のあった事件を取り上げる場合、関係者の名前は実名を使わないのがセオリーなのに、何故か柳生はそのまま実名を使ってしまっている。しかもその事件はまだ未解決。そんなことしたら出版なんてできるわけないのに。そして自殺してしまった。

また、なぜ「解決編」は尾道由起子を指名したのか?題材になっている事件の真相は?

と、色々な謎が次々に押し寄せてくる。

でもところどころで謎解き推理が繰り広げられるため未解決の事柄を見失わなくて済む。

そしてこの部分も結局は伏線になってたりして、かなり凝ってます。懲りすぎかもしれませんが・・・

 

途中、読んでいると土曜ワイド劇場風味に感じられたんだけど、それも結末を読んでなんだか納得。

(とは言っても、著者の作品は本書と「模倣の殺意」の2冊しか読んでいないので、この土曜ワイド劇場風味がこの作品の趣向なのか、作者の持ち味なのかはよくわからん)

 

あと、「模倣の殺意」もそうでしたが、セリフの言い回しがちょっとツボ。特に女性。

「一杯いかが?」「いただきますわ」とか。

 

なんとも味のある作家ですね、中町信って。

 

記事検索
QRコード
QRコード
プロフィール

shepherd2828

RSS
  • ライブドアブログ