1953年、スターリン政権下のソ連。ある夜、国家保安省(MGB)のエリート捜査官レオは、変死体となって発見された戦友の息子の亡骸と対面する。事件性は明白だったが、上司は“理想国家のソ連にこのような犯罪は存在しない”との理由で事故死として処理するよう命じる。疑念が拭えない中、今度は最愛の妻ライーサにあらぬスパイの容疑がかけられ、レオに妻を告発するよう圧力がかかる。これを拒否したため、レオは地方の警察署に飛ばされてしまう。するとそこで、再び少年が被害者の猟奇殺人事件に出くわす。犯人を野放しにするわけにはいかないと、署長のネステロフに協力を仰ぐレオだったが…。
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原題:Child 44
製作国:アメリカ
初公開年月:2015/7/3
監督:ダニエル・エスピノーサ
製作:リドリー・スコット、マイケル・シェイファー、グレッグ・シャピロ
製作総指揮:アダム・メリムズ、エリーシャ・ホームズ、ダグラス・アーバンスキー、ケヴィン・プランク、モリー・コナーズ、マリア・セストーン、サラ・E・ジョンソン、ホイト・デヴィッド・モーガン
原作:トム・ロブ・スミス『チャイルド44』(新潮社刊)
脚本:リチャード・プライス
撮影:オリヴァー・ウッド
プロダクションデザイン:ヤン・ロールフス
衣装デザイン:ジェニー・ビーヴァン
編集:ピエトロ・スカリア、ディラン・ティチェナー
音楽:ヨン・エクストランド
出演:トム・ハーディ(レオ・デミドフ)、ゲイリー・オールドマン(ネステロフ将軍)、ノオミ・ラパス(ライーサ・デミドワ)、ジョエル・キナマン(ワシーリー)、パディ・コンシダイン(ウラジミール)、ジェイソン・クラーク(ブロツキー)、ヴァンサン・カッセル(クズミン少佐)、グザヴィエ・アトキンズ(少年時代のレオ)、ファレス・ファレス(アレクセイ)
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2009年版『このミステリーがすごい!』で1位に輝くなど日本でも話題を集めたトム・ロブ・スミスの『チャイルド44』を「インセプション」「ダークナイト ライジング」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のトム・ハーディ主演で映画化したクライム・ミステリー。
スターリン独裁政権下のソ連を舞台に、国家が揉み消した連続猟奇殺人事件を巡り、一人のエリート捜査官が全体主義国家の恐るべき不条理に立ち向かって真相究明に奔走するさまをスリリングに描く。共演はゲイリー・オールドマン、ノオミ・ラパス。監督は「デンジャラス・ラン」のダニエル・エスピノーサ。
★予告★
原作にほぼ忠実なようではありますが、やっぱり相当端折ってるので、そこは割り切るってことで。
ん?ってところも多々ありますが、わたしは結構好きです。
青みがかった暗く寒々しい映像が、スターリン政権下ソ連の陰鬱とした雰囲気を醸し出していていい感じ。でも少し色調が暗すぎて、昼の屋外のシーン以外はちと見難い。
アクションシーンなんかもカメラが動きすぎだしカットは切りすぎでわかりにくい。
貨車でのアクションは場所も狭いからなのか寄り過ぎだし、色調の変化に乏しく暗い。
クライマックスの泥レスは、映っている人物は主要キャスト(しかも一人は女)なのにわかりにくい。
もっとしっかり見せてもらえないものか。せっかくトム・ハーディとノオミ・ラパスという超動いてくれる配役なのにもったいない。
ではありますが、個人的な好みの問題ではありますが、くすぐられるところが多々ありまして…。
たとえば貨車の中でレオに殴られるゴロツキの一人が本気でイヤそうな顔をしていたのがひどく印象的。あれ本当に何発かどっか殴られてるような気がする。トム・ハーディならやってる気がする。
ライーサの同僚教師との乱闘もなかなかエグくて良い。いきなりパワー系なファイト過ぎるのでヘンテコな感じですが、こういう異物感は大歓迎。
そしてノオミ・ラパスが強すぎる。
隙あらば力のある男につけ入れられるか弱く美しい妻どころか、選びぬかれたアスリートのようにキレっキレ。特に貨車の中では「いや~んレオ~レオ~」と助けを求めながらも頭突き。
ノオミとトム・ハーディのアクションはちょっと怖くてそこが良いのですが、原作を重視すると余計なことしやがって…となるというか、原作を無視したとしても怒るとやたら怖いレオと強すぎるガリガリのノオミの夫妻は、作品全体の流れからは少しおかしなことになっているのも確か。しかしこういう思わぬいびつさが見えてしまう場合、それが自分の好みに合っているとかなりエコヒイキな気持ちになるものです。
物語は、肝心の子どもに対する猟奇的な連続殺人事件というミステリー的な面は弱く、犯人の動機は時代背景から察する想像力に任せられるというか。殺人事件そのものからはドラマ性をほぼ排除し、ソ連の秘密警察の不条理な恐ろしさの中で妻と自分の良心を守る!という面を前に押し出したのかなあという感じ。
とは言ってもノオミ・ラパスの美人妻設定はさすがにちょっと無理があるような…。でも実は夫に心を開いていない様子なんか、やっぱりすごく上手。
あと、個人的には好きな役者がたくさん出ていてそういう点もうれしい。
ジェイソン・クラークなんかやっぱりターミネーターで近未来の指導者ジョン・コナーなんかやるより、こういう薄汚れた不憫な役が絶対にいい!
ジョエル・キナマンも嫉妬深くて狡いイヤ~な役で嬉しい。美形なのに後ろ暗くて粘着質な感じがいいです。「デンジャラス・ラン」の美形なのに死んだ目をした気色の悪いもう一人のセーフハウス管理人役といい、ダニエル・エスピノーサ監督作品のジョエル・キナマンはかなりツボ。「ラン・オールナイト」の正しく生きようとしている息子役も良かったけど。まあどっちにしろイケメン。
原作は三作のシリーズですが、映画のラストもシリーズ化を見据えた終わり方になっているので、続編の「グラーグ57」「エージェント6」も期待したいところではありますが、難しいだろうなあ。。。
本作のシリーズは無理かもしれないけど、「デンジャラス・ラン」もそうでしたが、ダニエル・エスピノーサ監督のどんよりとした窮屈な時間を描いたうえでドラマを動かすという作風は嫌いでは無いので今後も楽しみにしたいものです。そういえば「デンジャラス・ラン」の続編ってどうなったんだろう。
ところで、同じくトム・ハーディとノオミ・ラパス共演の「The Drop」は日本公開しないんでしょうか。すっごく観たいんですけども。
「Warrior」は日本版DVDがようやく発売されることになりましたが、映画館で観たかったなあ。「The Drop」の前年にイギリスで公開された「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」もようやくマッドマックスのタイミングで日本公開されたことだし、「The Drop」もやって欲しいなあ。
★The Drop Official Trailer★
ワンコと戯れるトムハが見れるのに!
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