帰り続けるだけは寄り道

映画やミステリー小説の感想などをたまにつらつらと。 過去の記事はマイカテゴリの「INDEX」に作品別、作家別でまとめています。 いただいたコメント、トラックバックは確認後の表示になります。

トム・ハーディ

『チャイルド44 森に消えた子供たち』観たら読みたくなるはず

child441953年、スターリン政権下のソ連。ある夜、国家保安省(MGB)のエリート捜査官レオは、変死体となって発見された戦友の息子の亡骸と対面する。事件性は明白だったが、上司は“理想国家のソ連にこのような犯罪は存在しない”との理由で事故死として処理するよう命じる。疑念が拭えない中、今度は最愛の妻ライーサにあらぬスパイの容疑がかけられ、レオに妻を告発するよう圧力がかかる。これを拒否したため、レオは地方の警察署に飛ばされてしまう。するとそこで、再び少年が被害者の猟奇殺人事件に出くわす。犯人を野放しにするわけにはいかないと、署長のネステロフに協力を仰ぐレオだったが…。

 

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原題:Child 44

製作国:アメリカ

初公開年月:2015/7/3

監督:ダニエル・エスピノーサ

製作:リドリー・スコット、マイケル・シェイファー、グレッグ・シャピロ

製作総指揮:アダム・メリムズ、エリーシャ・ホームズ、ダグラス・アーバンスキー、ケヴィン・プランク、モリー・コナーズ、マリア・セストーン、サラ・E・ジョンソン、ホイト・デヴィッド・モーガン

原作:トム・ロブ・スミス『チャイルド44』(新潮社刊)

脚本:リチャード・プライス

撮影:オリヴァー・ウッド

プロダクションデザイン:ヤン・ロールフス

衣装デザイン:ジェニー・ビーヴァン

編集:ピエトロ・スカリア、ディラン・ティチェナー

音楽:ヨン・エクストランド

出演:トム・ハーディ(レオ・デミドフ)、ゲイリー・オールドマン(ネステロフ将軍)、ノオミ・ラパス(ライーサ・デミドワ)、ジョエル・キナマン(ワシーリー)、パディ・コンシダイン(ウラジミール)、ジェイソン・クラーク(ブロツキー)、ヴァンサン・カッセル(クズミン少佐)、グザヴィエ・アトキンズ(少年時代のレオ)、ファレス・ファレス(アレクセイ)

 

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2009年版『このミステリーがすごい!』で1位に輝くなど日本でも話題を集めたトム・ロブ・スミスの『チャイルド44』を「インセプション」「ダークナイト ライジング」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のトム・ハーディ主演で映画化したクライム・ミステリー。

スターリン独裁政権下のソ連を舞台に、国家が揉み消した連続猟奇殺人事件を巡り、一人のエリート捜査官が全体主義国家の恐るべき不条理に立ち向かって真相究明に奔走するさまをスリリングに描く。共演はゲイリー・オールドマン、ノオミ・ラパス。監督は「デンジャラス・ラン」のダニエル・エスピノーサ。

 

★予告★

 

 

原作にほぼ忠実なようではありますが、やっぱり相当端折ってるので、そこは割り切るってことで。

ん?ってところも多々ありますが、わたしは結構好きです。

 

青みがかった暗く寒々しい映像が、スターリン政権下ソ連の陰鬱とした雰囲気を醸し出していていい感じ。でも少し色調が暗すぎて、昼の屋外のシーン以外はちと見難い。

アクションシーンなんかもカメラが動きすぎだしカットは切りすぎでわかりにくい。

貨車でのアクションは場所も狭いからなのか寄り過ぎだし、色調の変化に乏しく暗い。

クライマックスの泥レスは、映っている人物は主要キャスト(しかも一人は女)なのにわかりにくい。

もっとしっかり見せてもらえないものか。せっかくトム・ハーディとノオミ・ラパスという超動いてくれる配役なのにもったいない。

 

ではありますが、個人的な好みの問題ではありますが、くすぐられるところが多々ありまして…。

 

たとえば貨車の中でレオに殴られるゴロツキの一人が本気でイヤそうな顔をしていたのがひどく印象的。あれ本当に何発かどっか殴られてるような気がする。トム・ハーディならやってる気がする。

ライーサの同僚教師との乱闘もなかなかエグくて良い。いきなりパワー系なファイト過ぎるのでヘンテコな感じですが、こういう異物感は大歓迎。

そしてノオミ・ラパスが強すぎる。

隙あらば力のある男につけ入れられるか弱く美しい妻どころか、選びぬかれたアスリートのようにキレっキレ。特に貨車の中では「いや~んレオ~レオ~」と助けを求めながらも頭突き。

ノオミとトム・ハーディのアクションはちょっと怖くてそこが良いのですが、原作を重視すると余計なことしやがって…となるというか、原作を無視したとしても怒るとやたら怖いレオと強すぎるガリガリのノオミの夫妻は、作品全体の流れからは少しおかしなことになっているのも確か。しかしこういう思わぬいびつさが見えてしまう場合、それが自分の好みに合っているとかなりエコヒイキな気持ちになるものです。

 

物語は、肝心の子どもに対する猟奇的な連続殺人事件というミステリー的な面は弱く、犯人の動機は時代背景から察する想像力に任せられるというか。殺人事件そのものからはドラマ性をほぼ排除し、ソ連の秘密警察の不条理な恐ろしさの中で妻と自分の良心を守る!という面を前に押し出したのかなあという感じ。

とは言ってもノオミ・ラパスの美人妻設定はさすがにちょっと無理があるような…。でも実は夫に心を開いていない様子なんか、やっぱりすごく上手。

 

あと、個人的には好きな役者がたくさん出ていてそういう点もうれしい。

ジェイソン・クラークなんかやっぱりターミネーターで近未来の指導者ジョン・コナーなんかやるより、こういう薄汚れた不憫な役が絶対にいい!

ジョエル・キナマンも嫉妬深くて狡いイヤ~な役で嬉しい。美形なのに後ろ暗くて粘着質な感じがいいです。「デンジャラス・ラン」の美形なのに死んだ目をした気色の悪いもう一人のセーフハウス管理人役といい、ダニエル・エスピノーサ監督作品のジョエル・キナマンはかなりツボ。「ラン・オールナイト」の正しく生きようとしている息子役も良かったけど。まあどっちにしろイケメン。

 

原作は三作のシリーズですが、映画のラストもシリーズ化を見据えた終わり方になっているので、続編の「グラーグ57」「エージェント6」も期待したいところではありますが、難しいだろうなあ。。。

本作のシリーズは無理かもしれないけど、「デンジャラス・ラン」もそうでしたが、ダニエル・エスピノーサ監督のどんよりとした窮屈な時間を描いたうえでドラマを動かすという作風は嫌いでは無いので今後も楽しみにしたいものです。そういえば「デンジャラス・ラン」の続編ってどうなったんだろう。

 

 

ところで、同じくトム・ハーディとノオミ・ラパス共演の「The Drop」は日本公開しないんでしょうか。すっごく観たいんですけども。

「Warrior」は日本版DVDがようやく発売されることになりましたが、映画館で観たかったなあ。「The Drop」の前年にイギリスで公開された「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」もようやくマッドマックスのタイミングで日本公開されたことだし、「The Drop」もやって欲しいなあ。

 

★The Drop Official Trailer★

ワンコと戯れるトムハが見れるのに!

 

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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』シルクドソレイユがSlipknotに出会った感じ

madmax4石油も水も尽きかけ荒廃した世界。愛する家族を守れなかったトラウマを抱え、本能だけで生き長らえている元警官、マックス。ある日、資源を独占し、一帯を支配する独裁者イモータン・ジョー率いるカルト的戦闘軍団に捕まり、彼らの“輸血袋”として利用される。そんな中、ジョーの右腕だった女戦士フュリオサが反旗を翻し、ジョーに囚われていた5人の妻を助け出すと、彼女たちを引き連れ逃亡を企てたのだった。裏切りに怒り狂うジョーは、大量の車両と武器を従え、容赦ない追跡を開始する。いまだ囚われの身のマックスもまた、この狂気の追跡劇に否応なく巻き込まれていくのだったが…。

 

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原題:Mad Max: Fury Road

製作国:オーストラリア/アメリカ

初公開年月:2015/6/20

監督:ジョージ・ミラー

製作:ダグ・ミッチェル、ジョージ・ミラー、P・J・ヴォーテン

製作総指揮:イアイン・スミス、グレアム・バーク、ブルース・バーマン

脚本:ジョージ・ミラー、ブレンダン・マッカーシー、ニコ・ラソウリス

撮影:ジョン・シール

プロダクションデザイン:コリン・ギブソン

衣装デザイン:ジェニー・ビーヴァン

編集:マーガレット・シクセル

音楽:ジャンキー・XL

出演:トム・ハーディ(マックス)、シャーリーズ・セロン(フュリオサ)、ニコラス・ホルト(ニュークス)、ヒュー・キース=バーン(イモータン・ジョー)、ロージー・ハンティントン=ホワイトリー(スプレンディド)、ライリー・キーオ(キャパブル)、ゾーイ・クラヴィッツ(トースト)、アビー・リー(ザ・ダグ)、コートニー・イートン(フラジール)、ネイサン・ジョーンズ(リクタス)、ジョシュ・ヘルマン(スリット)、ジョン・ハワード(人食い男爵)、リチャード・カーター(武器将軍)、iOTA(コーマドーフ・ウォーリアー)、アンガス・サンプソン、ジェニファー・ヘイガン、メーガン・ゲイル、メリッサ・ジャファー、ジョイ・スミザース、クエンティン・ケニハン

 

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これまでにメル・ギブソン主演で3本が製作された傑作アクション・シリーズの30年ぶりとなる第4弾。ジョージ・ミラー監督が2代目マックスにトム・ハーディを迎え、満を持して贈るハイテンション・バトル・アクション大作。

資源も水も尽きかけ荒廃した未来を舞台に、独裁者ジョー率いる殺戮暴走軍団と、マックスが助太刀する反逆の女戦士フュリオサのノンストップ・チェイスが、3Dによるアドレナリン全開のド迫力アクション&バイオレンスで描かれていく。共演はシャーリーズ・セロン、ヒュー・キース=バーン、ニコラス・ホルト、ロージー・ハンティントン=ホワイトリー。

 

★予告★

 

 

ユナイテッド・シネマとしまえんのIMAX3D、TOHO CINEMAS新宿でTCX2DとMX4Dで今のところ3回鑑賞。

マッドマックスは大好きなクチです。マッドマックス2派ですが、一作目も好きだしサンダードームもあれはあれで好き。

だもんで公開前の6/5には「マッドマックス」&「マッドマックス2」の轟音上映会に行ったりなんだり。(上映前のトークイベントの様子はこちら

 

公開から1週間ちょい。

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で頭がいっぱい。トム・ハーディで胸いっぱい。

 

 

トム・ハーディは前から好きなんですけど、トム・ハーディのマックスぜんぜっっんいいですよっっ。

 

madmax4_max_nuxオープニングの立ちションしてるかのように見える後ろ姿。(双頭のトカゲを踏みつけるので、してませんよ。たぶん、だけども)

ガニ股でえっこらえっこら走る後ろ姿。

ガーデニングのフォークを使った口枷を嵌められ、輸血袋として逆さ吊りにされたり車の前に括られている姿。

砂に埋もれて立ち上がる姿。

ニュークスに繋がれた鎖を切ろうとして切れずに癇癪おこしてる様子。

鎖を切るのを諦めてニュークスの指を食い千切ろうとするも、口枷が邪魔で癇癪おこしてる様子。

諦めてニュークスを背負って車のドアごと運んでいる姿。

フュリオサとの肉弾戦で美しくか弱いイモータン・ジョーの妻たちに鎖を引っ張られて邪魔されて引きずられる姿。

ニュークスがヘッドスライディングで渡したマガジンを、受け取るのではなくニュークスに持たせたまま一瞬で銃に装着するところ。

威嚇でフュリオサの頭部近くに3発発砲するところ。

口枷を切ろうと、ヤスリでずっとシャカシャカやってるところ。

フュリオサがウォータンクの座席のあちこちに隠している銃をことごとく取り上げるところ。

妻たちに車内で悪口言われるところ。

運転しながらテキパキと弾を装填してジャストのタイミングでフュリオサにライフルを渡すところ。

高速リロード。

スプレンディドにサムズアップ

ウォータンクに迫る武器将軍を爆破して戻ってきた姿。

大量の武器と共に、しっかりハンドルとニュークスのブーツも確保してくるところ。

顔に付いている血を心配されても説明するでもなくあいまいに唸るだけで、顔を洗おうとしたバケツの中身が母乳なことに一瞬戸惑うもそのまま顔を洗う。不気味なのにコミカルでしかも強い感じ。

女が物見やぐらの上で全裸で助けを求めるのを見て、「ワナだな」と見破るときのちょい得意気なところ。

madmax4_max1

故郷を失ったことを知り慟哭するフュリオサに感情移入しているところ。

自分は通りすがりに過ぎないはずなのにフュリオサ達に無関心ではいられなくなるところ。

塩の湖を渡るが一緒に来ないかとフュリオサに誘われたとき、実はフュリオサの故郷について考えていて、地図に印をつけていたこと。フュリオサに声をかけられてあわてて地図を隠すところ。

塩の湖を渡るフュリオサに、シタデルに引き返せそこは故郷だと説明するところ。

トラックのタンクの上でよたつくところ。

棒飛び隊に捕まってフーコーの振り子になるところ。

棒に捕まって画面の左から右に抜けるカット。

手を撃ち抜かれしばらくは槍を付けたままにするも、人喰い男爵のピープルイーターに乗り移ると躊躇なく車のドアに掌を叩きつけて一気に手に刺さった槍を抜きやすくしてるところ。

刺されたフュリオサを見るときの顔。

刺されて気胸症状を起こすフュリオサにナイフを刺して応急処置するところ。

出血多量のフュリオサにテキパキと自分の血を輸血する気色悪くも頼れる働き。

輸血に使えるチューブは実はずっと肩に付けていたこと。

madmax4_max2瀕死のフュリオサを励ますために声をかけるも、言ってることは自分の名前はマックスと教えること。不器用すぎるわ。

いい感じにエンディングを迎えるも、結局、通りすがりの道を選ぶところ。

マックスがリフトにいなくなってることにフュリオサが気付き、人混みの中にマックスを見付け、見付けられたマックスがフュリオサを見る→フュリオサ無表情の中に若干の驚きと戸惑いと残念なような寂しいような顔→マックス少しだけうなずく→フュリオサ微かに微笑みうなずく。からの、マックスがフュリオサよりも少し多めに微笑み返したらついつい本気で笑顔になってしまいかけ、笑顔になりきる直前に後ろを向いて去っているところ。

 

やらなんやらを、気付くとぼんやり思い返している始末。

メル・ギブソンもいいけどね。

 

マックスの性格というか物の考え方が好きなんですね。

故郷を失ったフュリオサが目指す希望の地は、塩の湖のその先のここでは無いどこかではなく、居た場所に戻って立て直す道を示すところが素晴らしい。

マックスは真面目な警官だったから堅実さと道を踏み外すことの両方を知っている。また自分は孤独に、生きるためだけにさまよい獣のようになってしまった。しかしフュリオサ達と行動を共にする中で人間性を取り戻す。だからフュリオサ達にとってシタデルは第二の故郷なのだと、人間のまま生まれ変われる場所がそこにあるのだから逃げ続けてやがて狂気に堕ちる道に進まず、戦って勝ち取ることを示す。

マックスはフュリオサの高潔さを尊重し、ふさわしい道を示したのだ。

トム・ハーディ版のマックス最高にかっこいいんですよっっっ!!

 

 

そして他の登場人物たちも全員印象深く、特に敵キャラの濃さは尋常ではない。頭はいっぱい。

 

 

やはりギター野郎のコーマドーフ・ウォーリアーでしょうか。トータルの出番は数分のはずなのに!

 

コーマドーフが繋がれてるゴムは「マッドマックス サンダードーム」の、2人が入って出るのは1人♪のあれですよね。

ダブルネックのギターですが、よく見ると下はベース。さらによく見ると演奏の音はギターなのに、握っているのはベースのネックという場面が一瞬あった。たぶん。見間違いじゃないはず。

ドーフワゴンでマックスにギターを奪われると、ギターで棒飛び隊と応戦するマックスの背中にしがみついて取り戻そうとしています。マックスがギターから手を離すとしっかり取り戻して超笑顔。

最後には谷でウォータンクの横転に巻き込まれますが、死に様は写っていないような。まあ寝てても手放さないギターが放り出されることからも死んだと思いますけど。

太鼓隊も素敵すぎる。斜めにセットされて戦闘中ずっと太鼓叩いて戦意高揚に貢献。

予告でコーマドーフ・ウォーリアーの姿を見た時は予告用の特別映像で本編には出てこないキャラだと思ってました。だってあり得ないでしょ。おかしいもん。

それが本当に登場していることにまずびっくり。さらに世界観にしっくりはまってることに驚愕。そして劇中ギターのリフが流れると、来るか来るかと登場を待ちわびる。

 madmax4_TheDoofWarrior

 

 

あとおかしすぎるキャラクターは人喰い男爵。

 

乳首部分を切り抜いたスーツ姿の超デブ。しかもチェーンの乳首ピアスを付けて、常に自分の乳首を摘んでいじっている。そしてその習性についての説明は一切無し。イモータン・ジョーの妻たちが「ドケチの変態野郎」と表現しているが、基本的に他の登場人物もみんな変態野郎なので、とりたてて注目すべきコメントでは無いところがミソ。

madmax4_ThePeopleEater

 

 

イモータン・ジョーも搾乳やら資源の独占やらウォー・ボーイズの洗脳やらその他モロモロ悪人でありやることが鬼畜というかセンスがエグい。

 

だがしかし、ウォータンクの外につかまるスプレンディドに岩が迫ると「よけるんだ!」と叫んだり、スプレンディドが落車するとハンドルを完全に切って横転させて避けたり、倒れたスプレンディドを見て悲鳴を上げている。画面では声は出ずに口を開けて叫んでいる顔。イモータン・ジョーが口を開けるシーンはここだけなことからもその嘆きはマジ。

とは言っても、スプレンディドよりもお腹にいる自分の子供の心配なわけだけど。

madmax4_ImmortanJoe

 

 

ニュークスは一番変わった。

 

ウォー・ボーイズの狂信的なドライバーで、前半はイモータン・ジョーのために死ぬことが何よりの幸福であり、イモータン・ジョーに見られるだけで極楽。

友だちは肩に出来た二つの腫瘍のラリーとバリーだけ。どこか人恋しさを抱えていて憎めない。

ニコラス・ホルトは、異形の者をかわいらしく感じるようにさせる、という意味では毎度素晴らしい。最後のセリフは最初の方でも同じことを言ってるのだけれど、まったく違っていて泣ける。

妻たちも途中から完全にニュークスを仲間と思っていて、無意識にニュークスの肩に手を置きギュッと掴む。これは反対側の肩のラリーとバリーとは違う、戦いの中で生まれた生身の人間の仲間で、つまりニュークスの世界の変質を意味するように思えてグッときた。

madmax4_nux

 

 

イモータン・ジョーの妻たちも全員美しい。

 

荒廃した地の幻のような美しさだけれども、イモータン・ジョーにモノとして所有され、行末はブクブクに太らされて搾乳マシン。その家畜のような人生に対する絶望と怒りは想像を絶する。

なんだけど、ウォータンクの中では辛口のガールズトークも繰り広げ、マックスに聞こえるように逆セクハラ発言を織り交ぜる強かさが頼もしい。

最初はか弱いだけだったが、逃走の中で何をやるべきか理解し、それぞれが覚悟して戦うようになる。

「弾は死の種。植えられたら死ぬのよ」というセリフは、後に出てくる鉄馬の女が大切に持っていた汚染されていない種が「生命の種」であることへと繋がる。

madmax4_wives

 

 

madmax4_Furiosaそして今回の実質的な主役であるフュリオサ。かっこよすぎ!

 

好きなシーンはたくさんありますが、マックスとの関係性と二人の性格を地味に表していて好きな場面は…

ウォータンクの外でマックスが、近づいてくる武器将軍が乗ったピースメーカーをライフルで撃つが遠すぎて狙いが定まらずに外す。残りの弾は「残り2発…」と妻の 一人につぶやかれ、プレッシャーを感じつつも狙うマックスだったが再度外す。結局フュリオサが代わって撃って命中させる場面。

フュリオサはマックスの後ろに立って自分の方が適任だと思いながらも言い出せず、しかしマックスの真後ろで顔の高さも合わせて一緒になって狙いを定めているもんだから、マックスの方から交代を申し出られると、即座に遠慮無くマックスの肩を台にしてビシッと命中させる。ふたりとも不器用でかわいすぎる!

 madmax4_SKS

 

 

フュリオサとマックスの戦闘コンビネーションが抜群。

会話は最小限なのに、共闘し、各々の咄嗟の判断による行動にも迅速にアシストしている。イワオニ族との戦いで、それまで互いに警戒していたのに戦うと決まった途端にマックスがフュリオサに銃を渡す。フュリオサもマックスの変化に少し驚くも即座に順応する。マックスは運転しながらライフルに銃を込めて天井窓から身を乗り出すフュリオサに渡し、自分もテキパキと銃に弾を装填して左右後方を援護する。

さらに重要なのが、お互いに“待たない”のだ。

ウォータンクは目的に向かって戦いながら走り続ける。特に後半、引き返してからの戦闘において、ウォータンクから離れて戦っている者はなんとかして自分でウォータンクに追いつく。そのため物語は停滞せず、目まぐるしいアクションの見せ場に溺れながらも、明確な目的を持った物語がブレずにしっかり進む。それにより観客は、よりシビアな戦いの世界で生き抜く強さをマックス達に見るのだ。そしてマックスの生きることへの貪欲さに共感し、彼らを支持し、生きる欲望を捨てさせられたウォー・ボーイズを始めとするイモータン・ジョーの戦士達に同情する。

最初は洗脳によりイモータン・ジョーへの殉死をもってヴァルハラで蘇ると信じていたニュークスも、過酷な戦いの中で守りたい大切な人を得、初めて生きる強さを知り、そして意味のある栄光の瞬間を自分で選ぶ。

 

 

人は戦いたいから戦うのではなく、生きるために戦う。世界の秩序が変わっても、人は本能では生きたいのだ。

しかしイモータン・ジョーはウォー・ボーイズらの戦う理由を“死ぬため”にした。

イモータン・ジョー様のために死ぬことは栄光の瞬間であり、その後にはヴァルハラで生まれ変わる。そのような教えによって、イモータン・ジョーは自らの権力をより強固にしていた。

どんなに世界が悪く変わっても、生きている者には生きる欲求があるのだ。

カット数の多い、目まぐるしく変わる画面の中でも良く見るとあえて印象に残るような撮り方や編集などをしていて、美しい映像と考えぬかれたガジェットの数々にちゃんと意味があることがわかる。暴力とカーチェイスと奇抜な悪役などにも理由があり、それをちゃんと理解できるように作られている。

セリフで説明するのではなく、人や車のアクションと映像による演出、画面にメインで映っているモノと一緒に映っているモノが何か、といったことで説明されるのだ。

 

マックスとフュリオサのライフル狙撃交代の場面などがそれで、一つの場面の中に、メインのマックスと後ろに立つフュリオサ、さらに後ろに妻たちが映っている。

フュリオサが「私が撃つ」と言ったりライフルを奪うわけでも無いが、ライフルを構えるマックスをメインに置いた画面の後ろにフュリオサの明らかにヤキモキしている感じと、その後ろで見守る妻たちを一つの画面に入れることで、「フュリオサの方が…」という雰囲気を作り、観客も同様に思う。そして前しか見ていないマックスにもそれが伝わり、交代を申し出る。おもしろい。

また、大破した車から放り出される人が描く放物線、人や車が転倒するときの重量感、他の物との位置関係なども全てが尤もな自然さで映し出され、溜息が出る。

 

 

 

見れば面白いんだからいいから見ればいいのに!と思う作品は多々ありますが、わたしには今回の「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が別モノになってしまった。他の映画を見れなくなるんじゃないかという不安というか怖さがある。と思いつつそれなりに見てはいるけれど、これ以上に思い入れてしまう作品には死ぬまで二度と出会えないような気がする。

とりあえず上映終了までまだ何回か観に行くだろうなあ。早く飽きてしまいたい。

 

 

ちなみに、記事タイトルのコメントはトム・ハーディのインタビューから。

 

 

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『ダークナイト ライジング』 ベイン派です。

tdkr_batman人々の尊敬を集めた地方検事ハービー・デントの罪を一身に被り、ゴッサム・シティから姿を消したダークナイト(=バットマン)。それから8年、ゴードン市警本部長は真実を心におさめ、街の平和のために尽力していた。そんな束の間の平和を享受していたゴッサム・シティだったが、鋼のような肉体をまとった巨漢のテロリスト“ベイン”の登場で一変してしまう。街は次々と破壊され、無法地帯と化していく。人々の心が恐怖と絶望に支配される中、ついにブルース・ウェインは自らの封印を解き、再びケープとマスクを身にまとうのだったが…。

 

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製作国: アメリカ

初公開年月: 2012年7月

監督: クリストファー・ノーラン

製作: エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン、チャールズ・ローヴェン

製作総指揮: ベンジャミン・メルニカー、マイケル・E・ウスラン、ケヴィン・デラノイ、トーマス・タル

キャラクター創造: ボブ・ケイン

原案: クリストファー・ノーラン、デヴィッド・S・ゴイヤー

脚本: ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン

撮影: ウォーリー・フィスター

視覚効果監修: ポール・J・フランクリン

プロダクションデザイン: ネイサン・クロウリー、ケヴィン・カヴァナー

衣装デザイン: リンディ・ヘミング

編集: リー・スミス

音楽: ハンス・ジマー

特殊効果監修: クリス・コーボールド

出演: クリスチャン・ベイル(ブルース・ウェイン/ダークナイト=バットマン)、マイケル・ケイン(アルフレッド)、ゲイリー・オールドマン(ジェームズ・ゴードン市警本部長)、アン・ハサウェイ(セリーナ・カイル)、トム・ハーディ(ベイン)、マリオン・コティヤール(ミランダ・テイト)、ジョセフ・ゴードン=レヴィット(ジョン・ブレイク)、モーガン・フリーマン(ルーシャス・フォックス)、マシュー・モディーン(フォーリー市警副本部長)

 

★予告★

 

 

ご存知クリストファー・ノーラン版“バットマン”三部作の最終章。

tdkr_catwoman今回の敵はちょっと気になりすぎるトム・ハーディ演じるベイン。さらにアン・ハサウェイのキャット・ウーマンも登場して一気に華やかに。やっぱノーラン版はシリアス路線のうえに女優陣がちと地味すぎだったと思うの。アン・ハサウェイありがとう。ありがとうアン・ハサウェイ。

 

 

わたしはバットマンにたいした思い入れも無く、ふつうにヒース・レジャー版ジョーカーたまらん派です。

ライジング公開に先立って、一作目の「バットマン ビギンズ」と二作目の「ダークナイト」を再上映していたので、「ダークナイト」は行ってしまいました。だって映画館のスクリーンでまたヒース・レジャーのジョーカー観たいじゃないですか。ジョーカーが捕まって以降の話はどうでもいいというか。という程度の思い入れ。

車内で揺れてヨタヨタしながら手下に囲まれてバズーカ砲ぶっ放すジョーカーが楽しそうで大好きです。

 

気分もバッチリ盛り上がったところで、ユナイテッド・シネマとしまえんのIMAXで観てきました。

まあ「プロメテウス」をIMAXデジタル3Dで観たいので、劇場下見のつもりで行ったんですけどね。

IMAXいいですね。IMAXで撮影された映画をIMAXで観るのは非常に気分がいい。「プロメテウス」が楽しみです。(ちなみにプロメテウスはIMAXで撮ってないようです)

 

特に序盤の飛行機シーンは鳥肌。いい意味で。上がりまくりです。

機外の空中スタントもリアルだと思ったら本当にやってた。やっぱり重量感が違うわ。良い!いい!イイ! 

 

★メイキング★

 

こういうメイキング見ちゃうと、囚人群衆と警官隊の衝突乱闘シーンの強引さも楽しくなります。先頭集団で早々に撃たれて倒れた人は、倒れたままであの人ごみの中で踏まれたり蹴られたりしちゃってたのかなぁ。。

ウェイン邸の地下室の崩壊も大迫力だったし、このさい奈落の崖登りにやたら熱心だったことも許しましょう。

 

 

tdkr_Bane2さて今回わたしはベインにうっとりしてきました。

冒頭の飛行機のシーンでは、宙吊り状態で博士から死体に輸血するという、力強くもテキパキとした気色の悪い仕事っぷりを見せつけられ、すっかりエコヒイキ目線です。

少年時の苦難の思い出もポイント。まあ勘違いだったわけですが。あの子役の子、トム・ハーディに似てましたよね。うまいことやるものだ。

最後の方はちょっと人間味を覗かせてしまうベインですが、そこがちと残念。庇う相手があんまりわたし好みじゃないってだけですが。

 

それはそうとしてベイン役のトム・ハーディの肉体改造に感心してしまいます。すんごいですよね。

tdkr_Bane1

そこいらのチンピラマッチョではなく、王者の風格が漂っているのですよ。誰にでもわかりやすく説明しますと、つまりですね、新日で文字通りのトップスター選手として看板背負ってた後に全日の社長に就任するという、日本プロレス界の真の王道である二つの団体でトップとなった武藤敬司を思わせるということなのです。

こういうビースト系マッチョな肉体の若手で、しかもアクションばかりに偏らない人はいいですよね。動きは軽やかだし。他の作品では痩せて普通の役もちゃんとやってるし。

 

マッドマックスシリーズの第4作「マッドマックス/フューリーロード」もマックス役で出演らしいですよ。

もっともっと人気が出て、ニコラス・ウィンディング・レフン監督(「ドライヴ」の監督)の「Bronson」のDVDが日本語訳付きで早く発売されるといいのにな。

 

Bronson[リージョンコード2][PAL-UK]「Import]
Bronson[リージョンコード2][PAL-UK]「Import]

 

 

しかし肉体改造と言えばクリスチャン・ベイル。「マシニスト」のときは死神のようだったのに、すっかり大きくなっちゃって。この変態、じゃなくて変体っぷりには恐怖すら覚えます。

 

ところで「ダークナイトライジング」の格闘シーンってイマイチ物足りない気がします。格闘シーンが地味なのは監督の方針みたいですが、それにしてもなーんかモッサリしてて、あれじゃあどのタイミングでどっちが勝ってもいいというか、もう少しなんとかならんものなのかちら。

 

 

予告上映時間も合わせると約3時間の長丁場ですが、ビジュアル的に見所がてんこ盛りなので長さは感じませんでした。

ライジングを観るにあたって一応前二作も観ておいた方がいいとは思いますが、二作とも長いので無理しなくてもいいかも。ストーリーはなんとなく脳内補完してわかった気になれれば十分な気もします。

 

 

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