帰り続けるだけは寄り道

映画やミステリー小説の感想などをたまにつらつらと。 過去の記事はマイカテゴリの「INDEX」に作品別、作家別でまとめています。 いただいたコメント、トラックバックは確認後の表示になります。

俺の危機

『ベルファスト71』麻酔は大事!!

711971年、紛争が激しさを増していた北アイルランドのベルファスト。そこではアイルランドの統一を目指すカトリック系住民と、英国との連合維持を望むプロテスタント系住民の間の緊張が頂点に達していた。英国軍の新兵ゲイリーは、治安維持を目的に、この混沌のベルファストへと送り込まれる。ところが、パトロールを開始した部隊が早々に暴動に巻き込まれ、混乱の中で武器を盗まれてしまう。慌てて後を追うも、その間に部隊は撤退してしまい、ゲイリーはたった一人で敵陣のまっただ中に取り残されてしまう。様々な勢力が入り乱れ、誰が敵か味方かも分からない状況の中、必死でこの危険地帯からの脱出を試みるゲイリーだったが…。

 

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原題:'71

製作国:イギリス

初公開年月:2015/8/1

監督:ヤン・ドマンジュ

製作:アンガス・ラモント、ロビン・グッチ

製作総指揮:サム・ラヴェンダー、テッサ・ロス、ダン・マクレイ、ダニー・パーキンス、ヒューゴ・ヘッペル、マーク・ハーバート、リジー・フランク、レスリー・フィンレイ

脚本:グレゴリー・バーク

撮影:タト・ラドクリフ

プロダクションデザイン:クリス・オッディ

衣装デザイン:ジェーン・ペトリ

編集:クリス・ワイアット

音楽:デヴィッド・ホームズ

出演:ジャック・オコンネル(ゲイリー・フック)、ポール・アンダーソン(レスリー・ルイス)、リチャード・ドーマー(エイモン)、ショーン・ハリス(サンディ・ブラウニング)、マーティン・マッキャン(ポール・ハガティ)、チャーリー・マーフィ(ブリジッド)、サム・リード(アーミテージ中尉)、キリアン・スコット(クイン)、デヴィッド・ウィルモット(ボイル)、バリー・コーガン(ショーン・バノン)

 

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その帰属をめぐる対立が激しい紛争へと発展していた71年の北アイルランド・ベルファストを舞台に、戦場と化した街中で孤立してしまった一人の若い英国軍兵士の決死のサバイバルを描いた緊迫のサスペンス・ドラマ。主演は「ユナイテッド-ミュンヘンの悲劇-」のジャック・オコンネル。監督は英国のTVドラマ界で活躍し、これが長編劇映画デビューのヤン・ドマンジュ。

 

★予告★

 

 

舞台は72年に起こった血の日曜日事件前夜の71年のある日の北アイルランド・ベルファスト。

ベルファストで住民が揉めてるみたいだから治安維持目的でちょっと見てこい、程度の装備で現場に向かった若い英国軍兵士らが、カトリック勢力住民から激しく抵抗され、暴動に発展。経験も装備も不十分で、且つ使命はあくまでも治安維持であり、相手が暴力的であっても一般人に対して武力行使は出来ない。そんな混乱の中、主人公のゲイリーがはぐれて丸腰のまま一人取り残され、IRAメンバーから追われる話。

 

日本では馴染みが薄く情報も少ないが、北アイルランド紛争の中でも特に衝撃的な事件である72年の血の日曜日がどうして起こったのか、そこに至る背景と当時の緊張感が自然と理解できる。

IRA内部にも過激な暫定派と穏健派がおり、プロテスタント勢力の中には英国軍の工作員もおり、追われるゲイリーを救出ため、あるいは始末するために二転三転する駆け引きがスリリングに描かれ、目が離せない。

ゲイリーと共に出動した兵士たちは当然ゲイリーを救出したいが、緊張下でのベルファストにおいて話は単純にはいかない。単なる新兵の命に頭数以上の価値は無いのだ。

一方、まだまだ経験も覚悟も未熟なゲイリーの逃走劇は、サスペンススリラーとして非常におもしろく、ドラマチックでもある。

 

71-2ゲイリー方面のストーリーで登場する少年たちがいい。

クッソ生意気でかわいい小さな彼らは、それぞれに強固な信念があり、しかし立たされている現実は残酷でやり切れない。

全編見どころ満載でしたが、個人的に印象的だった場面はゲイリーの腹部の傷の縫合シーン。

あれはなんだ。演じてるジャック・オコンネルの痛がり方も本当に痛そうで、可哀想で可哀想で泣きそうになった。わたしは痛みの場面には強い方だと思いますが、あれは痛いよ!

 

なぜこんなことになってしまうのか、考えずにはいられない。相当おもしろいですよ。

でも都内は新宿武蔵野館1館のみの上映で、今週いっぱいで終わりそうです。ソフトが出てからでも是非。

 

 

ところで、MRFの将校ブラウニングの声にとっても聞き覚えがあると思ったら、

71-3.

右の人。敵を逃がして貸しを作るとは恐ろしい

数日前に観た「ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイション」でシンジケートのボスのレーンを演じているショーン・ハリスだった。

MI5_lane

一瞬見せる冷徹さにシビレる

ちなみに「プロメテウス」で、ミルバーンと洞窟で迷ってゾンビ化するファイフィールド役でもあります。

prometheus_fifield

顔が長いと思ったら大間違い

あと観てる人は少ないと思いますが、「NY心霊捜査官」で悪魔に取り憑かれたサンティノという恐ろしい役や、

DeliverUsfromEvil_Santino

上半身裸でタトゥーの人

「0:34 レイジ34フン」という、微妙ではありますがわたしは嫌いじゃないよ、というホラー映画にも出ています。

creep_craig

完全にクリーチャーですが、身のこなしがGood!!

 

とにかくちょっと気持ち悪い役(「0:34」は特に気持ち悪い)が多いのですが、毎度毎度外見が違いすぎて、声で「おや?」と気付きます。声質がちょっと優しくて、それが素晴らしくも気持ち悪い役と相まって、妙な存在感を醸し出しております。

「0:34 レイジ34フン」のクリーチャーから、とうとうM:Iシリーズのラスボスとは、嬉しいかぎり。とっても良い役者さんですよ!

『パージ:アナーキー』ハラハラドキドキスッキリ!

ThePurgeAnarchyその日は、1年に1度のパージ日。パージ開始まであと数時間と迫っていた。病気の父を抱え、娘のカリとともに低所得者が集まる地域に暮すシングルマザーのエヴァはまともな防犯設備もない自宅で不安な夜を迎えようとしていた。別居に向けた話し合いが進むシェーンとリズ夫婦は買い物を終え、家に向かう途中で車が故障してしまう。亡くなった息子の仇をとるため、この日を待ちわびていた男レオは完全武装し、装甲仕様の車で街へと繰り出すが…。

 

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原題:The Purge: Anarchy

製作国:アメリカ

初公開年月:2015/8/1

監督:ジェームズ・デモナコ

製作:ジェイソン・ブラム、マイケル・ベイ、アンドリュー・フォーム、ブラッドリー・フラー、セバスチャン・K・ルメルシエ

製作総指揮:ジャネット・ヴォルトゥルノ=ブリル、リュック・エチエンヌ

脚本:ジェームズ・デモナコ

撮影:ジャック・ジューフレ

プロダクションデザイン:ブラッド・リッカー

衣装デザイン:ハラ・バーメット

編集:トッド・E・ミラー、ヴィンス・フィリッポーネ

音楽:ネイサン・ホワイトヘッド

出演:フランク・グリロ(レオ)、カーメン・イジョゴ(エヴァ・サンチェス)、ザック・ギルフォード(シェーン)、キーリー・サンチェズ(リズ)、ゾーイ・ソウル(カリ)、マイケル・K・ウィリアムズ(カルメロ)

 

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1年に1晩だけ殺人を含むすべての犯罪が合法となる近未来のアメリカを舞台に描き、全米でスマッシュ・ヒットしたバイオレンス・スリラーの第2弾。パージの日を巡って様々な立場の人間が繰り広げる暴力とサバイバルの行方を群像劇スタイルで描き出す。監督は前作に引き続きジェームズ・デモナコ。

 

★予告★

 

 

一作目の「パージ」に続けて公開された二作目「パージ:アナーキー」を観ました。

パージ」はイマイチだったので無意識にハードルを下げていたのかもしれませんが、これは面白かった!最後はなんだかほろりとしてしまった。

 

「パージ」では中産階級の家族がパージを乗り切る話で舞台も主人公家族の家の中でしたが、今回の「パージ:アナーキー」は貧しい母娘、別居の話し合い中の夫婦、そして元警官(だったと思う)の孤独な男の5人がダウンタウンの街中でパージを乗り切り、そして元警官の男は当初の目的を遂げようとする話。

 

一作目ではなんだかんだ言ってもパージ法を受け入れている世界観の話だったので、色々理解しながらも、やはりモヤモヤが残ったのですが、今回はパージを楽しむことが出来ない、いわば普通の感覚の人にとってのパージという不条理が描かれているので、前回よりもパージ法そのものの設定に対する無理矢理な肯定感が軽減されていて良かった。前作は、パージ法なんてイヤでしょっていう視線が弱かったんですね。

またパージの楽しみ方も、単に殺戮を楽しんでストレス解消とか憂さ晴らしにとどまらず、お金持ちの人々の楽しみのために人間狩りの獲物を確保して売る商売があったり、金融機関はパージに合わせて現金を置いておかないシステムになっているなどの一言が加わっていたり、一作目で明らかに疑問に感じたことを物語の中でそれなりに解消していて好ましい。

さらにパージされた人数を増やすことで相対的に残りの364日の犯罪率は下がり、パージ法が必要な法律であるように見せる。そのために政府組織が国家的なシステムを活用してパージを行っているという真相も加わって、全体に深みが出た感じ。

 

ThePurgeAnarchy-2そして今回の主人公フランク・グリロ演じるレオが、強くて頼りがいがあって後ろ暗くて超いい!

フランク・グリロはアクション映画でちょいちょい見かけますが、今回は主役。「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」の対テロ作戦部隊S.T.R.I.K.E.のリーダー、悪役のラムロウですね。

風貌からは味方だと思っていいのかどうなのか微妙なところとかもちょうど良く、当然格闘アクションも銃の使い方も決まっていて言うことなし!だってキャップがいない世界でラムロウが味方なんだからそれはそれは心強いというものです。街の無軌道な若者や所詮は普通の人間でしか無い部隊やへっぴり腰のセレブなんか一網打尽。お荷物を4人抱えてる分、苦戦してはいますが、それでも強い強い!

そもそもの設定が1年に1度犯罪が許される日というトンデモ設定なんだから、やっぱりこんぐらいの強引な強さは欲しいものです。

最後も超ベタなお約束エンドではありますが、そこに至るなんやらかんやらですっかり一緒にパージを乗り切った仲間の気分になっていて、なんだかグッときてしまいました。

フランク・グリロ続投で三作目の製作も決まったそうです。一気に楽しみになりましたよ。

 

二作目の「パージ:アナーキー」の方がだんぜん面白いし、一作目を観てなくても何の問題も無いのですが、一作目の「パージ」を観るとハードルが下がるので一作目から先に観ると満足度高くなってお得な気がします。でも一作目で見限る人も多そうなのが気がかり。

『ゾンビーバー』犬、災難に遭う

Zombeaversある日、仲良し女子大生3人組が湖畔にキャンプにやってくる。やがて彼女たちの彼氏たち3人も合流して乱痴気騒ぎへ。そのさなか、バスタブで一匹の凶暴なビーバーが発見されるが、仲間の一人が撲殺して事なきを得る。ところが翌朝、捨てたはずのビーバーの死体が消えていた。実は、湖は医療廃棄物で汚染されており、そこに棲息しているビーバーたちはゾンビ化していたのだった。そうとは知らず水遊びに興じる6人。そんな彼らを悪夢の惨劇が待ち受けていた。

 

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原題:Zombeavers

製作国:アメリカ

初公開年月:2015/7/11

監督:ジョーダン・ルービン

製作:エヴァン・アストロウスキー、クリス・ルモール、ティム・ザジャロフ、クリス・ベンダー、J・C・スピンク、ジェイク・ワイナー

脚本:ジョン・カプラン、アル・カプラン

撮影:ジョナサン・ホール

プロダクションデザイン:フレディ・ワフ

編集:エド・マルクス

音楽:アル・カプラン、ジョン・カプラン、ジョーダン・ルービン

出演:レイチェル・メルヴィン(メアリー)、コートニー・パーム(ゾーイ)、レクシー・アトキンズ(ジェン)、ハッチ・ダーノ(サム)、ジェイク・ウィアリー(トミー)、ピーター・ギルロイ(バック)、レックス・リン(スミス)

 

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北米ではお馴染みの野生動物ビーバーがゾンビ化して若者たちを襲う生物パニック・ホラー・コメディ。監督はこれが長編デビューのジョーダン・ルービン。プロデューサーには、「ハングオーバー!」シリーズを手がけた製作陣が名を連ねる。

 

★予告★

 

キャンプに出かけた女子大生とそのボーイフレンド達がゾンビに襲われ、なんとか逃げ延びようとする話。

ゾンビ映画やキャンプで調子こいた若者が恐怖に見舞われるホラー映画は、基本フォーマットを踏まえつつ、ちょっとのアイデアで最後まで完遂させる力技が楽しいのですが、今回はゾンビがビーバーという、こいつは強敵足り得るのかどうかという無理な設定。

こういうジャンルに愛がある人は楽しめるし、無い人にとっては時間の無駄。そういうのですよ。

 

Zombeavers-2ビーバーのチープさや、木で塞いだ玄関や窓も牙で突破されてしまうところなんかは超ラブリーでほっこり。超絶くだらなくて楽しい作品のようでした。

ようでした、というのも寝てたのかって話ですがそうではなくて、あんまり見えてなかったんですわ。

 

東京の公開は新宿武蔵野館だけだったので武蔵野館で観たんですが、結構混んでいて、前の人の頭で字幕はほぼ読めず、スクリーンも全体の1/4位見えず。

空いてる席もありましたが、以前は自由席だった新宿武蔵野館も少し前から完全指定席制になってしまったので移動せずに結局最後まで見えないまんまで観てしまった。なので正直、まったく楽しめませんでした。話はわかるんだけど、話がわかっても楽しかない。いや~どうすれば良かったんだろう。。

 

それはそれとして、エンディング曲がとても楽しかったです。「ハングオーバー!」シリーズの、スチュの即興の歌を思い出した。音楽担当は監督と脚本の人なのね。

『野火』あんな地獄はイヤだ絶対イヤだ

nobi第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。日本軍の敗戦が色濃くなった中、田村一等兵は結核を患い、部隊を追い出されて野戦病院行きを余儀なくされる。しかし負傷兵だらけで食料も困窮している最中、少ない食料しか持ち合わせていない田村は早々に追い出され、ふたたび戻った部隊からも入隊を拒否される。そしてはてしない原野を彷徨うことになるのだった。空腹と孤独、そして容赦なく照りつける太陽の熱さと戦いながら、田村が見たものは…。

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製作国:日本
初公開年月:2015/7/25
監督:塚本晋也
製作:塚本晋也
原作:大岡昇平『野火』(新潮文庫)
脚本:塚本晋也
撮影:塚本晋也、林啓史
編集:塚本晋也
音楽:石川忠
サウンドエフェクト:北田雅也
助監督:林啓史
サウンドミックス:北田雅也
出演:塚本晋也(田村一等兵)、リリー・フランキー(安田)、中村達也(伍長)、森優作(永松)

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大岡昇平による戦争文学の傑作を「鉄男」「六月の蛇」の塚本晋也監督が執念で映画化した衝撃の問題作。凄惨を極めた太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、一人の敗残兵が極度の飢えに襲われた中で体験する戦場の狂気とその地獄絵図を通して、人間の尊厳をめぐる問いと戦争の本質に迫っていく。主人公は塚本監督自らが演じ、その他のキャストにはリリー・フランキー、中村達也、森優作。

★予告★



先に。今回はもしかしたら気持ち悪い記事かも。


話も絵面もグロいっすよ。でも空や自然の美しさもとびっきり。
塚本監督作品は強烈にアクが強いのですが視点がどこか淡白で、わたしには品が良く感じます。
登場人物の中では永松の人物像が興味深かった。
孤独は嫌だから安田と行動を共にし、安田に尽くす。そこに強い信念も教育も無くおそらくはどうしようも無い状況における思考停止ゆえ。永松は最初はイモのために田村を殺そうとしたが、後には田村にも優しく、最後には自分以外には残酷で無神経な面が溢れだす。目の前の強い者や身内しか目に入らず、罪悪感が乏しい。本質は実に身勝手。人として見下げ果てるしかない安田よりも醜悪に思えた。それは人肉食行為の是非とは違う、空虚さの果ての醜悪さだ。演じた森優作の幼く無垢な容姿やあまり達者では無い演技が功を奏していて、おそらく演じている本人が思っている以上に面白い人物になったと思う。

殺したから酷い、食べたから酷い、利己的だから酷い、殺さないから偉い、食べないから偉い、利他的だから偉い、そういう単純な物差しで図れるものではない。
人間が極限状態に追い込まれ、生存本能に逆らえずに死ぬことが出来ない。それがどれほど過酷なことか、人間としての尊厳とは何か、その状況に陥ってさえも尊厳を保つべきなのかどうなのか、極限状態で己の尊厳を捨てずにいることが後の自分にどう影響してくるか、日常に戻ってから健全な精神を保てるのか。

ところで、人肉食を受け入れるならば食糧には困らない。
一体あれば相当長持ちしそうだが熱帯の中では腐敗も早い。皆で分け合うほうが理に適っている。日持ちはどのくらいかを考えそこから逆算して一体あたり何人が適切か、さらに何人が何日生きるために何日ペースで何体必要になるかを考えるようになるだろう。しかしそうそう都合良くフレッシュな食糧が手に入るとは限らない。そうすると徐々に食糧にすべき頃合いの判断基準が下がってくるような気がするし、そうなると次は自分かもしれない、弱ったら順番が回ってくると恐ろしくなるだろう。
湧いている虫と新鮮な人体とどっちがマシか考えると悩みませんか?悩める程度の差、と言うか。
決断には宗教観が激しく影響するような気がする。日本人はそのあたりのハードルが低いかもしれないなあとか思う。個人的には、極限状態に陥って人の死体を食べてしまった人がいたとして、責める気もしないし嫌悪感が湧くとも思えないです。わたしの場合は。仕方無いとしか思えないし、それで生き延びたなら本心から良かった良かったと思うような気がする。

本当にはやってないのに自分はニューギニアで人を食ったと言う伍長と、食糧にするために人を殺して猿の肉だと言う永松と、猿の肉だと話を合わせているが実は人肉だと知っている安田。全員が嘘をついている。これは実は三人とも人肉食に対して理解を示す立場であると思う。ただタブーであり倫理に反するから露悪的な嘘をついたり、大人の態度としてやってないことにしておくのだろう。その場所が極限状態の戦場という異常な空間であるにも関わらず、平和な社会を営む上で必要な倫理感を適用するのは立派と言えるのかどうか。


愛する人と別れたくないからとかまだ死にたくないからとかで戦争は嫌だという理由とは違う。あんな地獄は嫌だ。絶対に嫌だ。そう思わせる世界が描かれている映画である。
それなりに耐性無いとキツいかもとは思うので、興味ある方は頑張って観てください。

『チャイルド44 森に消えた子供たち』観たら読みたくなるはず

child441953年、スターリン政権下のソ連。ある夜、国家保安省(MGB)のエリート捜査官レオは、変死体となって発見された戦友の息子の亡骸と対面する。事件性は明白だったが、上司は“理想国家のソ連にこのような犯罪は存在しない”との理由で事故死として処理するよう命じる。疑念が拭えない中、今度は最愛の妻ライーサにあらぬスパイの容疑がかけられ、レオに妻を告発するよう圧力がかかる。これを拒否したため、レオは地方の警察署に飛ばされてしまう。するとそこで、再び少年が被害者の猟奇殺人事件に出くわす。犯人を野放しにするわけにはいかないと、署長のネステロフに協力を仰ぐレオだったが…。

 

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原題:Child 44

製作国:アメリカ

初公開年月:2015/7/3

監督:ダニエル・エスピノーサ

製作:リドリー・スコット、マイケル・シェイファー、グレッグ・シャピロ

製作総指揮:アダム・メリムズ、エリーシャ・ホームズ、ダグラス・アーバンスキー、ケヴィン・プランク、モリー・コナーズ、マリア・セストーン、サラ・E・ジョンソン、ホイト・デヴィッド・モーガン

原作:トム・ロブ・スミス『チャイルド44』(新潮社刊)

脚本:リチャード・プライス

撮影:オリヴァー・ウッド

プロダクションデザイン:ヤン・ロールフス

衣装デザイン:ジェニー・ビーヴァン

編集:ピエトロ・スカリア、ディラン・ティチェナー

音楽:ヨン・エクストランド

出演:トム・ハーディ(レオ・デミドフ)、ゲイリー・オールドマン(ネステロフ将軍)、ノオミ・ラパス(ライーサ・デミドワ)、ジョエル・キナマン(ワシーリー)、パディ・コンシダイン(ウラジミール)、ジェイソン・クラーク(ブロツキー)、ヴァンサン・カッセル(クズミン少佐)、グザヴィエ・アトキンズ(少年時代のレオ)、ファレス・ファレス(アレクセイ)

 

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2009年版『このミステリーがすごい!』で1位に輝くなど日本でも話題を集めたトム・ロブ・スミスの『チャイルド44』を「インセプション」「ダークナイト ライジング」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のトム・ハーディ主演で映画化したクライム・ミステリー。

スターリン独裁政権下のソ連を舞台に、国家が揉み消した連続猟奇殺人事件を巡り、一人のエリート捜査官が全体主義国家の恐るべき不条理に立ち向かって真相究明に奔走するさまをスリリングに描く。共演はゲイリー・オールドマン、ノオミ・ラパス。監督は「デンジャラス・ラン」のダニエル・エスピノーサ。

 

★予告★

 

 

原作にほぼ忠実なようではありますが、やっぱり相当端折ってるので、そこは割り切るってことで。

ん?ってところも多々ありますが、わたしは結構好きです。

 

青みがかった暗く寒々しい映像が、スターリン政権下ソ連の陰鬱とした雰囲気を醸し出していていい感じ。でも少し色調が暗すぎて、昼の屋外のシーン以外はちと見難い。

アクションシーンなんかもカメラが動きすぎだしカットは切りすぎでわかりにくい。

貨車でのアクションは場所も狭いからなのか寄り過ぎだし、色調の変化に乏しく暗い。

クライマックスの泥レスは、映っている人物は主要キャスト(しかも一人は女)なのにわかりにくい。

もっとしっかり見せてもらえないものか。せっかくトム・ハーディとノオミ・ラパスという超動いてくれる配役なのにもったいない。

 

ではありますが、個人的な好みの問題ではありますが、くすぐられるところが多々ありまして…。

 

たとえば貨車の中でレオに殴られるゴロツキの一人が本気でイヤそうな顔をしていたのがひどく印象的。あれ本当に何発かどっか殴られてるような気がする。トム・ハーディならやってる気がする。

ライーサの同僚教師との乱闘もなかなかエグくて良い。いきなりパワー系なファイト過ぎるのでヘンテコな感じですが、こういう異物感は大歓迎。

そしてノオミ・ラパスが強すぎる。

隙あらば力のある男につけ入れられるか弱く美しい妻どころか、選びぬかれたアスリートのようにキレっキレ。特に貨車の中では「いや~んレオ~レオ~」と助けを求めながらも頭突き。

ノオミとトム・ハーディのアクションはちょっと怖くてそこが良いのですが、原作を重視すると余計なことしやがって…となるというか、原作を無視したとしても怒るとやたら怖いレオと強すぎるガリガリのノオミの夫妻は、作品全体の流れからは少しおかしなことになっているのも確か。しかしこういう思わぬいびつさが見えてしまう場合、それが自分の好みに合っているとかなりエコヒイキな気持ちになるものです。

 

物語は、肝心の子どもに対する猟奇的な連続殺人事件というミステリー的な面は弱く、犯人の動機は時代背景から察する想像力に任せられるというか。殺人事件そのものからはドラマ性をほぼ排除し、ソ連の秘密警察の不条理な恐ろしさの中で妻と自分の良心を守る!という面を前に押し出したのかなあという感じ。

とは言ってもノオミ・ラパスの美人妻設定はさすがにちょっと無理があるような…。でも実は夫に心を開いていない様子なんか、やっぱりすごく上手。

 

あと、個人的には好きな役者がたくさん出ていてそういう点もうれしい。

ジェイソン・クラークなんかやっぱりターミネーターで近未来の指導者ジョン・コナーなんかやるより、こういう薄汚れた不憫な役が絶対にいい!

ジョエル・キナマンも嫉妬深くて狡いイヤ~な役で嬉しい。美形なのに後ろ暗くて粘着質な感じがいいです。「デンジャラス・ラン」の美形なのに死んだ目をした気色の悪いもう一人のセーフハウス管理人役といい、ダニエル・エスピノーサ監督作品のジョエル・キナマンはかなりツボ。「ラン・オールナイト」の正しく生きようとしている息子役も良かったけど。まあどっちにしろイケメン。

 

原作は三作のシリーズですが、映画のラストもシリーズ化を見据えた終わり方になっているので、続編の「グラーグ57」「エージェント6」も期待したいところではありますが、難しいだろうなあ。。。

本作のシリーズは無理かもしれないけど、「デンジャラス・ラン」もそうでしたが、ダニエル・エスピノーサ監督のどんよりとした窮屈な時間を描いたうえでドラマを動かすという作風は嫌いでは無いので今後も楽しみにしたいものです。そういえば「デンジャラス・ラン」の続編ってどうなったんだろう。

 

 

ところで、同じくトム・ハーディとノオミ・ラパス共演の「The Drop」は日本公開しないんでしょうか。すっごく観たいんですけども。

「Warrior」は日本版DVDがようやく発売されることになりましたが、映画館で観たかったなあ。「The Drop」の前年にイギリスで公開された「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」もようやくマッドマックスのタイミングで日本公開されたことだし、「The Drop」もやって欲しいなあ。

 

★The Drop Official Trailer★

ワンコと戯れるトムハが見れるのに!

 

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